地球と日本の温暖化の現状
地球の気温は今、かつてない速さで上昇を続けています。世界各地で観測される記録的な猛暑や異常気象は、もはや一時的な現象ではありません。
日本でも夏の気温が年々高くなり、熱中症による被害が深刻化しています。この温暖化はどこまで進んでいるのでしょうか。世界と日本の現状を見ていきましょう。
世界の平均気温は産業革命以降上昇
産業革命前から近年までの間に観測された世界の気温上昇量は約1.06度に達しました。気候変動に関する政府間パネルによる報告では、人間活動の影響で地球が温暖化していることについて「疑う余地がない」と断言されています。
国連の気候変動に関する政府間パネルは、産業革命前と比べた世界の気温上昇が2021年から2040年に1.5度に達するとの予測を公表しました。この予測は、2018年の想定より10年ほど早まっています。
世界の年平均気温は、様々な変動を繰り返しながら上昇しており、長期的には100年あたり0.77度の割合で上昇しています。特に1990年代半ば以降、高温となる年が多くなっているのが特徴です。
日本の気温は100年で約1.3度上昇
日本の年平均気温は、様々な変動を繰り返しながら上昇しており、長期的には100年あたり1.40度の割合で上昇しています。この上昇率は世界平均を大きく上回るものです。
2024年の日本の平均気温は、統計開始以降最も高い値となりました。特に1990年代以降、高温となる年が頻出しているのが顕著な傾向といえるでしょう。
猛暑日や熱帯夜の年間日数は増加傾向にあり、特に熱帯夜は100年あたり18日のペースで増加しています。一方で冬日の日数は減少しており、季節のメリハリが失われつつあります。
異常気象の頻発と記録的猛暑
2025年夏の日本の平均気温偏差は+2.36度となり、3年連続で最も高い記録を更新しました。多くの地方で過去最も早い梅雨明けとなるなど、季節の進行が早まっています。
群馬県伊勢崎では国内の歴代最高気温となる41.8度を観測したほか、夏の猛暑日や日最高気温40度以上の延べ地点数の記録も更新されました。こうした極端な高温が常態化しつつあるのです。
2024年の日本では記録的な猛暑の影響で、熱中症による健康リスクが一段と高まりました。特に6月から9月にかけての搬送者数は過去最多を記録し、深刻な社会問題となっています。
地球温暖化が起こる原因とメカニズム
なぜ地球の気温は上昇し続けているのでしょうか。その原因は、人間活動によって大気中に放出される温室効果ガスの増加にあります。
温室効果ガスは本来、地球を暖かく保つために必要な存在です。しかし産業革命以降、その濃度が急激に高まったことで、地球の温度バランスが崩れてしまいました。
温室効果ガスの増加が主な原因
二酸化炭素などの温室効果ガスは地表面から放射された赤外線を吸収し、地球表面温度を高める効果があります。温室効果ガスがまったく存在しなければ、地球の平均気温はマイナス19度前後になってしまいます。
温室効果ガスに占めるガス別排出量の割合は、二酸化炭素が76.7パーセントを占めています。その他にメタン、一酸化二窒素、フロン類などが温室効果ガスとして知られています。
産業革命以前、約280ppmであった大気中二酸化炭素濃度はその後増加し、2023年には420.0ppmに達しました。最近10年間の平均年増加量は約2.5ppmと、1990年代の平均年増加量より大きくなっています。
二酸化炭素排出量の急増と化石燃料
18世紀に始まった産業革命により、石炭・石油・天然ガスなどの化石燃料の使用が急増し、大気中の二酸化炭素濃度は産業革命以前に比べ約40パーセント増加しています。
化石燃料は燃やすと大きなエネルギーを得ることができますが、同時に大量の二酸化炭素を大気中に放出します。自動車などの交通機関の燃料として、工場での燃料として、火力発電所での燃料として、化石燃料は日々燃やされ続けているのです。
世界の温室効果ガス排出の大きな原因は、化石燃料の燃焼による電気と熱の生成です。電力のほとんどは今なお石炭、石油、天然ガスを燃やすことでつくられており、それによって二酸化炭素と亜酸化窒素が発生しています。
地球温暖化が日本に与える影響
温暖化の進行は、すでに日本の暮らしに深刻な影響を及ぼし始めています。猛暑日の増加、豪雨災害の頻発、農作物への被害など、その影響は多岐にわたります。
私たちの生活を支える食料生産や自然環境が、今大きく変わろうとしているのです。日本で起きている具体的な影響を見ていきましょう。
猛暑日と豪雨災害の増加
年平均気温の上昇にともない、猛暑日の年間日数は増加傾向にあります。最高気温が35度以上の日が増え続けることで、熱中症による搬送者数も年々増加しています。
1日あたりの降水量が100mm以上の日数は、100年あたり0.33日の速さで増加しています。これは大雨が降る頻度が増えていることを示すもので、1時間あたりの降水量が50mm以上の激しい雨や80mm以上の猛烈な雨の回数も増加傾向にあります。
台風の進路にも異常が見られるようになりました。従来の移動ではない迷走台風が増加しており、反時計回りに動いたり、Uターンしたりと予測が外れがちな動きをするようになっています。
農作物の収穫量減少と品質低下
日本の主食である米は、高温によって品質が低下します。稲の開花後20日間の平均気温が26度から27度を超えると、白く未熟な米粒が増え、商品価値が下がってしまうのです。
2023年には、新潟のコシヒカリや山形のつや姫など、日本が誇る高級ブランド米にも大きな影響が出ました。開花期に35度以上の猛暑が続くと、受粉がうまくいかず、稲穂の実が入らなくなる高温不稔という現象が起きます。
トマトやナスなどの果菜類では、強い日差しと高温によって果実が焼けたり、受粉がうまくいかず実が付かなかったりする問題が起きています。葉物野菜や根菜類では、成長が早まったり遅れたりして、収穫時期がずれることもあります。
生態系の変化と感染症リスク
温暖化は日本の豊かな自然環境にも変化をもたらしています。気温上昇により、動植物の生息域が変化し、従来の生態系バランスが崩れつつあるのです。
気候変動や農地利用の変化に伴い、家畜の伝染性疾病を媒介する野生生物の分布域が拡大しています。また、気候変動によりミカンコミバエ等の病害虫も発生地域の拡大、発生時期の早期化、発生量の増加が確認されています。
海の環境も大きく変わっています。日本近海の平均海面水温は100年あたり1.33度の速さで上昇しており、この値は世界平均の上昇率の2倍を超えています。海水温の上昇は、魚の生息域を変化させ、漁業にも影響を与えています。
2100年に予測される日本の姿
このまま温暖化が進むと、今世紀末の日本はどうなってしまうのでしょうか。科学者たちの予測によれば、私たちが想像する以上に深刻な状況が待ち受けているかもしれません。
真夏日が今の2倍近くに増え、海面が大きく上昇し、多くの動植物が生息地を失う可能性があります。未来の日本の姿を見ていきましょう。
真夏日が年間100日を超える予測
温室効果ガス濃度上昇の最悪のケースでは、今世紀末の真夏日は現在と比べて全国では平均52.8日増加すると予測されています。現在でも真夏日が多い地域では、年間100日を超える日数になる可能性があります。
気候変動に関する政府間パネルの報告によれば、最も温室効果ガスの排出が多いシナリオでは、21世紀末の世界平均の地上気温は現在と比較して2.6度から4.8度上昇すると予測されています。
産業革命前に50年に1度しか起きなかったレベルの極端な高温は、世界平均気温が既に1度温暖化した現在では4.8倍、温暖化が1.5度まで進めば8.6倍、2度まで進めば13.9倍の頻度で生じると評価されました。
海面上昇による沿岸部への影響
国連の機関が公表した報告書によると、今世紀末までに海面の上昇が進むと予測されています。南極の氷の解ける速度が予想より速まっていることが判明し、確度は低いとしながらも、2300年には最大で5.4メートル上昇する恐れがあるとされました。
海面が30センチ上昇すると半分の砂浜が、1m海面が上昇すると日本全国の砂浜の9割以上が失われると予測されています。美しい海岸線が失われれば、観光業にも大きな打撃となるでしょう。
1年あたりの沿岸の浸水被害は現在の100倍から1千倍に増えるとみられています。高潮の被害も年々大きくなり、沿岸部の都市や産業施設は深刻なリスクにさらされることになります。
動植物の生息域変化と絶滅リスク
温暖化は日本の動植物にも大きな影響を与えます。気温上昇により、多くの生物が生息地を追われ、一部は絶滅の危機に瀕する可能性があるのです。
2100年までに欧州やアジアなどの一部の氷河では8割以上が解けると予測されています。日本でも高山に住むライチョウなど、寒冷な環境に適応した生物の生存への影響は避けられません。
地球温暖化の影響により、南九州など30の地域で桜が満開にならず、5地域でまったく開花しなくなる可能性があります。日本の春を象徴する桜の開花にも、温暖化は深刻な影響を及ぼすことになるでしょう。
日本が取り組む温暖化対策
深刻化する温暖化に対し、日本は具体的な行動を起こし始めています。2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする目標を掲げ、再生可能エネルギーの導入を進めているのです。
しかし、この目標を達成するには、国や企業の取り組みだけでは不十分です。私たち一人ひとりの行動が、未来を変える力になります。
2050年カーボンニュートラル目標
菅内閣総理大臣は2020年10月26日の所信表明演説において、我が国が2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることを意味します。
2021年4月には、2030年度に温室効果ガスを2013年度から46パーセント削減することを目指すと表明されました。さらに50パーセントの高みに向けて、挑戦を続けていくとしています。
経済産業省が中心となり、関係省庁と連携してグリーン成長戦略を策定しました。この戦略では、成長が期待される14の重要分野について実行計画を策定し、国として高い目標を掲げています。
再生可能エネルギーと省エネ推進
日本が排出する温室効果ガスのうち約9割が二酸化炭素であり、その約4割が電力部門からの排出となっています。電力部門の脱炭素化は、カーボンニュートラル実現の鍵を握っているのです。
再生可能エネルギーの導入拡大が急務となっています。太陽光発電、風力発電、水力発電など、化石燃料に頼らない発電方法への転換が進められています。同時に、省エネルギー技術の開発も加速しています。
政府は過去に例のない2兆円の基金を創設し、次世代太陽光発電、低コストの蓄電池、カーボンリサイクルなど、野心的イノベーションに挑戦する企業を支援しています。
私たちができる身近な取り組み
温暖化対策は、決して政府や企業だけの問題ではありません。私たち一人ひとりの日常的な行動が、大きな変化を生み出す力になります。
節電は最も身近で効果的な取り組みです。使っていない部屋の照明を消す、エアコンのフィルター掃除をこまめに行う、待機電力を削減するなど、小さな心がけが積み重なれば大きな効果を生みます。
節水も温暖化対策につながります。シャワーを出しっぱなしにしない、お風呂の水を洗濯に再利用するなど、水の使い方を見直してみましょう。また、マイバッグやマイボトルの使用、公共交通機関の利用なども、温室効果ガス削減に貢献します。
一人ひとりの小さな行動が集まれば、必ず大きな力になります。未来の地球を守るため、今日からできることを始めてみませんか。